日本橋の久坊

2008年6月5日 日常
もう30年以上前のことだが、色紙のようなものになにやら人生訓を書きつづったものを母親が持ち帰ってきた。

なんでも日本橋の路上で1枚1円で売ってたらしい。

「勉強したってえらくはなれぬ、だけどしなけりゃなおなれぬ」
とか
「馬鹿だ馬鹿だと言ってるうちにほんとの馬鹿になっちゃうよ」
とか、なんとも味わい深い字でかきなぐったようなもの

なんだか長いことうちに飾ってあった。

その後、母や弟は、なんどか日本橋で出逢って会話を交わしたらしい。でつい先日、弟から、朝日新聞に、追悼記事が出てると連絡があった。

去年亡くなっていたらしい。しかもそんなどこのだれとも分からないホームレスみたいな生活していた人のことを追悼した個展が開かれてるという。

それが今日までだったので、出かけてきた。

正確には、日本橋で手作り人形を売ってた「久坊」と、茅場町で花を飾ってた「おじい」の二人を偲ぶ二人展。

といっても、展示物はほとんどなく、狭いスペースにわずかばかりの遺作が並べられているだけ。

主催者はその二人を取材したことのある記者らしい。

それでもその狭いスペースに入れ替わり人が来ては、少ない作品をみな愛おしそうに眺めていた。

たぶんムーミンに出てくるスナフキンがそのまま抜け出して歳をとったらこんな感じだろうかと思う。

ノートに来場者が書き記したことばに湿っぽいものが無いのも、実に感慨深い。

取材を受けたのがおととしのこと。そして、去年から今年にかけて二人とも相次いで亡くなったと言うことは、こうして、彼らのことを語り伝える人間が現われて、お役目が終わったんだろうと思う。

ネットでみつけた数少ない記事は下記

http://www.tanteifile.com/tamashii/scoop_2007/02/18_01/index.html
http://blogs.dion.ne.jp/ingenue_1978/archives/3714571.html

今回の二人展の元記事はこちら
http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000000806020001

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