名前

2006年8月19日 エッセイ
<ズルッ>

ん?

<シュルル>

<へらりはらりひらり>

<へたりん>

何とも言えぬ、落下感&着地感

<カッ、カッ、カッ、カッ、>

遠ざかる足音・・・

って、お〜い、そこのおんな! 落とし物!
オ・ト・シ・モ・ノ!

・・・

聞こえるわけ無いか

短いつきあいだったわぁ、昨日であったばかりじゃん
まだ、名前も知らなかったのに。

だいたいにおいて、軽率っちゅうか、、、

うっ、殺気!

<シャコシャコシャコシャコ>

ぐぅお〜〜〜〜っ

<ズリズリズリ>

ひ、轢かれた

しましまがついちまった
くそ、チャリのヤロウ


「ねぇ、ママ。ねぇ、なんか落ちてるの。」
「そんな汚いから、触っちゃダメ!」

そんなキタナイって、さっきまで、新品だったのに・・・

「でも、可哀想だよ。」

同情までされてる、あたしって・・・

「ねぇ、ここに下げたら、落とした人が、気がつくよ」
「そうねぇ、、、。」

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<カチャ>
(あらっ、無い。昨日買ったばかりのハンカチ。)
(も〜、どこで落としたのかなぁ。)

・・・

(まぁ、いっかぁ。)

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<ゆら、ゆらら>
<さわさわ〜>

まぁ、なんか、吊るされるってのも、悪くはないな。
景色見えるし。

<ダダダダダ、ヴゥオ〜ン>

ゴホッ、ゴホゴホ
ゴホッ

はっ、排気ガス、ちゅうやつですか。
うゎっ、なんかベタベタ。いっぺんにすす汚れた感じ

車多いわぁ。。。
こんなところに立ってる木ってのも、なかなかたいへんなもんだなぁ。

はぁ〜・・・

いつまで、ここに下がってるのかなぁ。

退屈してきたなぁ。

<ポツ ポツポツポツ>

おい、雨まで降って来ちゃったよ

むぅ、何とも言えぬじっとり感

なんかほんと惨めな感じしてきた
このまま薄汚れて、忘れられて、、、

首でもつって、、、

って、もう吊られてるんだった。

なんだか、暗くなって来ちゃったし、

ふぅ

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(あーぁ。もう、こんな時間。)
(なんで、あたしが残業しなきゃいけないのよ。)

(今日は、朝から一日、良いことがなかったし。)
(だいたい、あのハンカチ落としたところから、ツキが落ちたんだわ。)

(さっさと帰ろ。)

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はぁ、疲れた・・・

<カッカッカッカッ>

なんか、聞き覚えあるような、ないような

おっ、ここだ、ここ。おんな!
やっ、気がついたみたい。

そう、立ち止まって、じろじろ見て、
そんな、いいから、あんたのだよ、あ・ん・た・の

で、キョロキョロして、

おぃ!どこ行くんだ。おぃっ、おぃってば!

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(はぁ、疲れた・・・)

(あれ?なんか、前方、右20度あたりのところに、
見覚えのあるような、ないような)

(うわっ、きっ、きたなっ・・・)

(どうしよ、誰か拾ってくれたのかなぁ)

(え〜と、誰も見て・・・うっ、あそこに居るのって、まさか、
うちのお局。わっ、こんなとこ見られたら。)

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「ねぇ、ママ。あそこ。」
「あら、まだ、なんか下がってるわね。」

「うん。でも・・・。」
「なにかしら。なんか書いてあるわ。」

拾ってくれた方へ
ありがとう

「良かった。ハンカチさん、おうちへ帰れたんだね。」
「そうね。良かったわね。」

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<パンパンッ>
<ひらひらら〜>

う〜、生き返る。
お日さまって気持ちいいわぁ。

うとうとと〜

ふぬっ?なんか、くすぐったいぞ。
こら〜、ラクガキ禁止!

K

A

N

おろっ?なまえ?

A

K・A・N・A

カナ!

なまえ、カナかぁ。よろしくね。

もう、落とすなよ。名前まで書いたんだから。

ほんと、お願い。

もう、他の人のになれないんだぞ。

ねっ、ねっ、

たのむよ〜。

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